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民間事業者の身元保証(連帯保証)サービスの利点と注意点

1.病院や施設において身元保証(※連帯保証を含む。)サービスが必要な現状
1-1.身元保証人とは?
身元保証人とは、ある人の身元(素性)を保証し、万が一の際にその人の代わりに責任を負う人のことです。
身元保証人には、本人の信用を証明し、問題が起きた際の損害を賠償する責任があります。
です。就職、賃貸契約、入院、施設入所など、様々な場面で必要となります。
9割以上の病院・施設において、入院・入所の際に「身元保証人」が求めているそうです。
1-2.民間事業者の身元保証サービス
身元保証人がいない場合、入院・入所が断られてしまう可能性もあります。
ところが、おひとり様には身元保証人を頼める親族がいないケースが多いのが実情です。
そこで、おひとり様対策として、民間事業者による身元保証サービスの検討が課題となります。
総務省の調査によれば、身元保証等高齢者サポート事業を行う事業者は412事業者に上り(令和5年8月時点) (令和5年8月「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書」総務省)、身元保証サービスのニーズが高まっています。

2-1.身元保証の分類
身元保証には、狭義の身元保証と広義の身元保証があります。
①狭義の身元保証問題
入院や施設入所などの際に必要となる身元保証人がいない場合
②広義の身元保証問題
上記に加えて、「この先、この高齢者に何があっても本人に代わって対応してくれる」人がいない(=本人の代わり、家族の代わり)場合
2-2.実際に必要とされる場合
①緊急連絡先の確保
☑施設や病院からの連絡
 ☑通院の付き添いや入退院時のサポートなど
②連帯保証人の確保
 ☑入院費、施設利用費の連帯保証
※最近の病院の対応
次のような場合、「連帯保証人不要」とする病院も
▲クレジットカード払いで、クレジットカード番号を入院時に登録
▲病院指定の保証会社等と契約
▲入院保証金の預け入れ
③親族にお願いするのは困難な場合
☑甥姪が現役世代の場合、日中の対応が難しい。
 ☑親族が遠方に住んでおり、対応が難しい。
 ☑甥姪に迷惑をかけないようにしたい。

3.身元保証人は本当に必要なのか~建前と現状の乖離
3-1.病院の義務
医師には応招義務、施設にはサービス提供義務があります。
医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項では、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とされています(「応招義務」)。
3-2.施設の義務
厚生労働省は、介護保険施設(指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設及び介護医療院)について、「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)等の省令により、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないとしています。
3-3.国の指導
厚生労働省は、平成30年度に都道府県に通知を発出し、
①医師法の「正当な事由」とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られること、
②介護保険施設において入院・入所希望者に身元保証人がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由に該当しないことを挙げ、
病院・施設が、身元保証人がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことがないよう、適切な指導を要請しています。
(①平成30年4月27日付け厚生労働省医政局医事課長通知、②同年8月30日付け厚生労働 省老健局高齢者支援課・振興課通知)。
また、厚生労働省は、令和元年に「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」、令和3年に「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインに基づく事例集」を作成し、身元保証の代替方法などを提案してます。
それにもかかわらず、実際上、身元保証人がいないため、結果的に病院や施設に入れないことが未だに社会問題として解消されていな状況にあります。

4.民間事業者が提供する身元保証サービスの特徴・注意点
こうした現状では、身元保証サービスを事前に備えておかなければ安心して老後の生活を送れませんので、民間事業者の身元保証サービスの検討は重要です。
4-1.身元保証サービスの特徴と注意点
☑①ポイント:高齢者が単独で契約する
☑②ポイント:サービス内容が複雑で多岐にわたる
☑③ポイント:サービス費用が高額である
☑④ポイント:預託金が発生することが多い
☑⑤ポイント: 契約内容の履行を監督する仕組みが不十分

4-2よくある身元保証サービスにまつわる事業者のトラブル事例
残念ながら、民間事業者の身元保証サービスにまつわるトラブルは、社会的な問題へと深刻化しています。以下、「令和5年8月 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査結果報告書」総務省より、事例をいくつか引用しました。
【トラブル事例1~親族との財産管理に関するトラブル】
利用者とこれまで疎遠であった親族が、利用者と連絡を取り合った際に、利用者が身元保証に関する契約をしたことを知り、「自分を差し置いて契約するのか」と事務所に現れて、契約の解除を申し入れ、そのまま解除に至ったことがある。 利用者の大半は親族と疎遠になっており、事業者側から契約した旨の連絡を行うこと自体がトラブルを誘発するおそれがあり、対応に苦慮している。
利用者の親族と事業者との間で以下のトラブルが起きた。
(事例1)利用者と締結していた任意後見契約に基づき、任意後見を開始した後、同利用者と疎遠だった親族が現れて、「自分が成年後見人となるべきだ」と主張された。同利用者とは死後事務委任契約も締結していたが、同利用者が亡くなった後、当該親族は、自らが喪主となって、葬儀や納骨等を行うとしたため、契約を解除し、預託金については手数料等を除き全額返金した。
(事例2)利用者の死後に、利用者と疎遠だった親族に対して葬儀の連絡をし、公正証書遺言の内容を説明したところ、親族は「遺産は自分が相続するはずであり、公正証書遺言の内容に納得できない」として、各種契約は無効であり、遺言も本人の意思ではないため無効であると訴訟を提起した。裁判では、同利用者の体調に加え、当該親族の家庭内暴力が原因で、同利用者は当該事業者を身元保証人として施設へ入所した経緯があったことから、事業所が勝訴した。 (B事業者)
【トラブル事例2~親族との遺贈・寄付に関するトラブル】
(事例1)特定の親族に遺産を相続させたいという意思があった高齢者(従前、事業者と契約を締結)について、当該高齢者が入所する施設から、「事業者の手配により作成された当該高齢者の遺言書を公証役場にて確認したところ、遺産は全て事業者に遺贈する記載になっていた」との相談があった。当市区町村は、上記施設からの相談を受けて弁護士に相談し、弁護士が事業者に対して、遺言書が高齢者の意思に反する内容になっているため修正するよう伝えたが、修正後も事業者に全財産を遺贈する記載になっていた。その後、高齢者の判断能力が不十分になってきたため、弁護士は、成年後見人(補助人)を付け、事業者との契約を解除するとともに、当該高齢者の意思に沿った内容の遺言に修正した。
(事例2)介護施設等に入所するに当たって事業者と契約を締結した高齢者について、当該高齢者が入所する施設が、当該高齢者の財産を全額寄附するよう求める内容の手紙が事業者から届いたことを不審に思い、施設からの相談を受けた弁護士が調査を行うと、既に遺言書が作成されており、当該高齢者が保有する財産の管理や運用、処分をする権利を当該高齢者の親族に与えていたが、重度障害者であるため、事業者に財産管理等の権利を再付与し、最終的に事業者が財産を受け取る内容となっていた。このため、弁護士が遺言書を修正し、事業者との契約も解除した。
【トラブル事例3~利用者の判断能力低下による遺言書のトラブル】
(事例1)特定の親族に遺産を相続させたいという意思があった高齢者(従前、事業者と契約を締結)について、当該高齢者が入所する施設から、「事業者の手配により作成された当該高齢者の遺言書を公証役場にて確認したところ、遺産は全て事業者に遺贈する記載になっていた」との相談があった。 当市区町村は、上記施設からの相談を受けて弁護士に相談し、弁護士が事業者に対して、遺言書が高齢者の意思に反する内容になっているため修正するよう伝えたが、修正後も事業者に全財産を遺贈する記載になっていた。その後、高齢者の判断能力が不十分になってきたため、弁護士は、成年後見人(補助人)を付け、事業者との契約を解除するとともに、当該高齢者の意思に沿った内容の遺言に修正した。
(事例2)有料老人ホームから、「事業者の職員が頻繁に利用者のところに遺言の確認とサインを求めに来ているが、本人は到底その内容を理解できるような状態ではないため、成年後見制度を活用するなど何らかの対応ができないか。」という相談があった。当地域包括支援センターは、当該利用者がノートに文字を書く練習を事業者がさせていたことや、死亡後に土地などの資産を事業者に寄附する旨の内容の遺言書を書かせている状況がうかがえたことから、福祉事務所と協議し、成年後見の申立てを行うこととなり、後見人が選任された。
【トラブル事例4~解約に関するトラブル】
(事例1)利用者から解約の希望があった際に、事業者に対し、入会金も含めて契約の際に支払った費用の全額を返金してほしいと申し入れがあった。しかし、契約書上、入会金を返金しないこととしているため、その旨を利用者に説明したが、理解してもらえなかった。消費生活センターや市役所に相談し、改めて利用者に面談して説明したい旨を連絡したが、面談に応じてもらえないままとなっている。
(事例2)介護施設等に入所することとなった利用者の身元保証及び死後事務を受託した事業者には、その後、当該利用者と長く会っていなかった親族が身元保証及び死後事務を自ら行うと申し出たため、契約を解約された。解約に伴い返金するのは預託金のみであり、契約手数料及び保証契約料については、パンフレットにも解約する場合にそれらの費用は返金しない旨を記載しており、契約当初から口頭で利用者に対して説明していたが、当該親族から、預託金しか返金しないことについて不満であると苦情を受けた。当該トラブルを踏まえて、契約前の面談・ヒアリング時や契約時にも、契約後は契約手数料及び保証契約料を返金しないことをより重点的に説明することにより、再発防止に努めている。
4-3.「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」から学ぶ、実務で気をつけたい3つのポイント
紹介事例のような事業者とのトラブルを未然に防止するため、国は、同ガイドラインを作成するにいたりました。
①ポイント1契約締結にあたって留意すべき事項
☑契約締結にあたって、事業者は、民法や消費者契約法に定められた民事ルールに従いつつ、契約内容の適正な説明(契約書・重要事項説明書を交付した説明)を行うことが重要。また、医療・介護関係者等との連携や、推定相続人への説明など、きめ細かい対応を行うことが望ましい。
※同ガイドラインで示された重要事項の具体例
1)契約者に対して提供するサービス内容や費用
2)当該利用者の費用の支払方法
3)契約者に対して提供するサービスの履行状況を確認する方法
4)入院・入所等が必要となった場合における対応方針、医療に係る意思 決定の支援
5)利用者の判断能力が低下した場合の対応方針
6)契約するサービスの債務不履行や不法行為により利用者に損害が発生 した場合の賠償に関  するルール
7)契約するサービスの解除方法・解約事由や契約変更や解約時の返金に 関する取扱い
8)預託金の管理方法等
9)死後事務として提供されるサービスの内容
10)寄附や遺贈に関する取扱方針
11)個人情報の取扱方針と管理体制
12)相談窓口の連絡先
☑寄附・遺贈については、サービス利用の契約条件にすることは避けることが重要であり、遺贈を受ける場合も公正証書遺言によることが望ましい。
②ポイント2契約の履行にあたって留意すべき事項
☑契約の履行にあたっては、契約に基づき適正に事務を履行するとともに、提供したサービスの時期や内容、費用等の提供記録を作成、保存、定期的な利用者への報告が重要(後見人にも情報共有が重要)。
☑利用者から前払金(預託金)を預かる場合、運営資金等とは明確に区分して管理することが望ましい。なお、履行の際にも医療・介護関係者等との連携が重要。
☑利用者からの求めがあれば、利用者が契約を解除する際に必要な具体的な手順等の情報を提供する努力義務を負う。
☑利用者の判断能力が不十分となった場合、成年後見制度の活用が必要。成年後見人等が選任された後は、契約内容についてもよく相談することが望ましい。
③ポイント3事業者の体制に関する留意事項
☑利用者が安心して利用できるよう、ホームページ等を通じた情報開示、個人情報の適正な取扱い、事業継続のための対策、相談窓口の設置に取り組むことが重要。

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