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任意後見制度の基本と注意点

成年後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、①任意後見制度と②法定後見制度があります。                                        1.成年後見制度の概要
1-1.法定後見制度(判断能力低下「後」の対策)
成年後見:本人の判断能力が全くない場合に、家庭裁判所が後見人を選任します。
保佐  :本人の判断能力が著しく不十分な場合に、家庭裁判所が保佐人を選任します。
補助     :本人の判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所が補助人を選任します。
※法定後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々の援助者(成年後見人)を家庭裁判所が選任し、法律的に支援する制度です。
成年後見制度の開始原因は、「認知症」を理由に利用するケースが最も多く、近時の統計では、全体の62.6%を占めめます。その他の理由として、知的障害9.9%、統合失調症8.8%、高次脳機能障害4.1%となってます。
法定後見制度の最大の注意点としては、
☑ご家族が必ず後見人になれる訳ではない。※現在約4分の3が専門職後見人(弁護士・司法書士などの法律専門家)に選任されている。
ということです。ご家族を確実に後見人に指定したい場合には、任意後見制度を利用する必要があります。
1-2.任意後見制度(判断能力低下「前」の対策)
将来判断能力が衰えた場合に備えて、契約により自ら後見人を決めておく制度
※ただし、任意後見監督人が必ず家庭裁判所から選任されます。

2.成年後見人の3つの役割
☑①財産管理:預貯金や印鑑の管理、不動産の売買契約や賃貸借契約の締結、遺産の分割など                                                                                                                                                                                ☑②身上保護:介護福祉サービスに関する事務、施設入退所に関する事務、医療に関する事務など
☑③報告事務:定期的に家庭裁判所や監督人への事務報告
また、被後見人(本人)について生じた重要事項(※)についてもその都度家庭裁判所 や監督人への報告
※財産の処分(不動産の売却など)、遺産分割、相続放棄、施設の入退所など

3.任意後見契約とは
将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合に備えて、元気なうちに自分の後見人になってもらうことを専門家などに委任しておく契約です。
3-1.任意後見が開始するまでの流れ
【契約選択時】
ステップ1 任意後見受任者を決定する
ステップ2 契約内容を決定する
ステップ3 公証役場で任意後見契約を締結する
ステップ4 公証人の嘱託により法務局で登記がなされる
※任意後見契約書は公正証書で作成しなければならない
【判断能力低下時】
ステップ5 任意後見監督人選任の申立
ステップ6 任意後見監督人の決定
ステップ7 任意後見開始

-2.任意後見制度の注意点
☑①注意点:任意後見契約は必ず公正証書で締結しなければならない。
☑②注意点:任意後見監督人が必ず選任される。後見人は監督人に3ヶ月に1回報告が必要です。
☑③注意点:任意後見人には決められた範囲での代理権しかなく、また契約取消権がない。
※「任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。」(任意後見契約に関する法律第3条)と定められている。
※任意後見契約は、「任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる。」(任意後見契約に関する法律2条②)と定められている。
※任意後見監督人の報酬(月1万円~月2万円程度)が任意後見終了まで継続的に発生する。
※法定後見の成年後見人と異なり、任意後見人には固有の取消権がない。
※もっとも、任意後見契約の代理権目録に取消権を行使できる条項を入れておけば、任意後見人が取消権を行使して本人の被害の回復を図ることができるとされている。
☑④注意点:積極的な財産活用、相続税対策などを行うのが難しい。
※任意後見制度も法定後見制度と同じく、あくまで「成年後見制度」の1つ。したがって、一旦開始した後は両者に本質的な違いはなく、本人の財産の維持と減少防止が責務。
※不動産の売却、抵当権設定、賃借権設定、株の売却、生命保険の解約など、重要な財産を処分する場合は、任意後見人に代理権が認められる場合であっても、その必要性を慎重に検討
する必要がある。重要な財産を処分する必要がある場合には、事前に必ず任意後見監督人に相談することになる。
※本人の財産をその配偶者や子、孫などに贈与したり、貸し付けたりすることは、たとえ税法上の優遇措置があったとしても、原則として認められない。相続税対策を目的とする贈与等に
ついても基本的には認められない。
※もっとも、代理権目録に贈与等ができる条項が記載されていれば可能とする見解もある。

3-2.初期費用と申立てにかかる費用※東京家裁の場合
【費用の種類・費用の目安】
(1)初期費用(契約にかかる費用)
①専門家の報酬:約5万円~10万円 専門家に契約書の作成を依頼した場合の費用。
②公正証書の作成費用:約2万円~3万円 出張を依頼した場合は別途出張報酬がかかる。
③書類収集費用:約3,000円~5,000円 戸籍抄本、住民票、印鑑証明書などの取得費用
(2)後見監督人選任申立てにかかる費用
①専門家の報酬:約5万円~10万円※専門家に申立ての手続きを依頼した場合の費用
②申立手数料及び後見登記手数:2,200円※家庭裁判所に収入印紙で納付
③送達・送付費用 ※家庭裁判所に郵便切手で提出
④医師の診断書の作成費用:約5,000円~10,000円
⑤書類収集費用:約2,000円~3,000円※住民票、戸籍の附票、戸籍抄本などの取得費用
(3)任意後見にかかる費用開始後にかかる費用(ランニングコスト)
①任意後見人の報酬の目安:無報酬~5万円程度(月額)
②任意後見監督人の報酬の目安:1万円~ 2万円程度(月額)

※任意後見の契約数と後見監督人選任申立件数
令和5年(1月から12月まで)の任意後見契約締結の数、任意後見監督人選任の申立件数等をみると、令和5年の任意後見契約締結の数は1万6253件である(登記統計・成年後見登記の件数)のに対し、令和5年の任意後見監督人選任の申立件数は871件となってます(なお、令和5年末時点で現に任意後見契約が効力を生じている本人の数は2773件です。)。
なお、令和5年以前の件数においても、同様に、任意後見契約締結の数に比べて任意後見監督人選任の申立件数は少ない状況にあります。
このような状況を踏まえると、本人の判断能力が不十分な状況にあるときに本人保護のための必要最小限の公的な関与として制度上予定されている任意後見監督人による監督が実際上なされていない状況が生じているケー スが一定数あると考えられます。
※任意後見監督人選任申立が行われない理由
任意後見監督人の選任の申立ての有無につき、していないを選択した者(2万1692人)を対象に、任意後見監督人の選任の申立てをしていない理由を問う設問(複数選択可)の回答の内訳は、以下のとおりとなってます。                                                                                                                                                           「ご本人の判断能力に問題がなく、必要がないから」(1万4714 人、67.8%)
「任意代理契約のままで支障を感じていないから」(3671人、16.9%)
「任意後見監督人に報酬が支払われることに抵抗があるから」(1333人、6.1%)
「医師の診断書等多くの書類の準備が必要となるなど裁判所への申立てをするのが負担だから」(1299人、6.0%)
「選任の申立てが必要なことを知らなかったから」(1097人、5.1%)
「任意後見監督人に誰がなるか分からないから」(1077人、5.0%)

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